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津軽言語学

津軽弁辞典

津軽と南部

青森県は、中央を走る奥羽山脈(八甲田)によって東西に分断され、また、津軽半島・下北半島によりの存在によって、「H」の形をしています。そして、この地理的・気候的条件と歴史背景によって、大きく津軽・南部・下北の3地域に分類されます。それらは同一の県とは思えないほど、それぞれの独自の気候風土と、独自の文化をもっています。

豪雪で知られる津軽地方は、旧津軽藩で、古くは安藤氏に統治されたところです。現在の青森市・弘前市・五所川原市・黒石市及び、東津軽郡・西津軽郡・南津軽郡・北津軽郡・中津軽郡で構成されています。このホームページで取り上げる「津軽弁」は、この地域の言葉です。この地域では、夏祭りとして、夜間に大燈籠を運行する、「ねぷた」「ねぶた」が行われます。春の弘前さくら祭りは、全国的に有名です。また、「津軽富士」という別名をもつ岩木山では、毎年旧暦の8月1日に、「お山参詣」という祭りが行われ、津軽一円から、五穀豊穣を祈る人々が集まります。

馬の産地で知られる南部は、南北朝の時代から廃藩置県に至るまで、「南部藩」南部氏(甲斐源氏)によって統治され続けた地域で、岩手県をはじめ、三戸郡・八戸市・十和田市・三沢市・上北郡の一部で構成されています。夏に海側から吹く「やませ」によって、冷害に襲われることもあります。この地域では「南部弁」が使われ、夏には京都の流れをくむと言われる「三社大祭」などの山車祭りが行われます。この地域の「八戸」「三戸」「五戸」「六戸」「七戸」と岩手県の「一戸」「二戸」などの「戸」というのは、馬の生産に深い関係がある地名です。

津軽と南部は、津軽氏祖・津軽為信がもともと南部藩の武士であったためか、藩政時代まで争いが絶えず、現在でも野辺地町にある旧藩境から、東西で方言がきっぱりと分かれているといいます。

下北はもともと南部藩の所領で、藩の重要な湊「下北七湊」があり、上方から北前船でやってきた人や移住してきた漁民の言葉の影響を強く受けています。戊辰戦争の後、白虎隊で有名な会津藩の斗南転封に伴い、約一万五千人以上の会津人が移住してきた歴史があります。しかし、極寒で不毛の地であったため、その大半は数年のうちに亡くなったり、下北を離れました。このような下北の地を開拓した会津人が、下北弁に及ぼした影響は皆無だとまで言い切れませんが、これといった類似点が見あたらないに等しい状態です。下北弁は陸上伝播より海上伝播の影響が強い方言です。霊場恐山はこの下北にあります。

青森県地図

津軽弁について

津軽弁は、「どさ?」、「ゆさ!」(「どこへ行くのですか?」「風呂屋まで行きます」)というように、比較的短い言葉で会話されるのが有名です。この理由は、寒いから口が凍るからだとか、雪が口にはいるからだとか言われますが、実際は標準語よりも長くなる語も沢山あって、信憑性は殆どないようです。

しかも、私(一人称単数)という意味の「わ」や、あなた(二人称単数)という意味の「な」などは、古語辞典などにも載っている、正式な日本語だったのです。このように津軽では、一般では使われなくなった古い言葉や、古い風習が多く残っているといわれます。

津軽弁は独特のものがあり、伊奈かっぺいさんのように、この言葉を活かして執筆活動をしておられる方もいます。また、年に一度「津軽弁の日」なるイベントが開かれ、津軽弁による詩や俳句、短歌などが全国から募集され発表されます。

分類について

名詞
物の名前を表す語です。津軽ではよく、物の名前の最後に「こ」や「っこ」を付けて呼びます。たとえば、「飴っこ」、「蕎麦っこ」、「汽車っこ」、「本こ」などがあります。
動詞
人や物の動作を表す語で、一般的には言い切りの音が「え」段である言葉です。
形容詞
物や事柄、動作などの様子を表す言葉で、一般には言い切りの音が「い」段である修飾語です。津軽弁では、この他にも「え」段で終わるものも多数あります。
形容動詞
物や事柄、動作などの様子を表す言葉で、一般には言い切りの語尾が「~だ」で終わる修飾語です。名詞を修飾するときは語尾が「~な」に変化します。津軽弁ではいつでも「~だ」の形で、語尾変化はしません。標準語の「静かな部屋」という語句は津軽弁では「静がだ部屋」のようになります。
品 詞 活用名 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形
動詞 五段活用
下一段活用 e/et elu elu ele
上一段活用 ilu ilu ile ile
形容詞 グ活用 egu esi e/e: e/e: ---
シグ活用 igu isi i/i: i/i: ---
形容動詞 ---
後に続く語 どぎ
副詞/連体詞
語尾変化なしで、他の語を修飾する言葉です。津軽弁では一般に「~っと」や「~ど」の形で終わるものが多数です。

表記について

このホームページでは、発音について、基本的にはローマ字で記してあります。また、以下のような基準で発音記号が振られています。語彙のひらがな表記は、一番近いと思われるもので表記しています。

  • アクセントは「'」で表し、単語が長い場合には、二番目に強いアクセントに「`」が付いている箇所もあります。
  • 津軽弁では、イ段の発音が、標準語の「イ」ではなく、英語と同じく”「イ」と「ウ」の中間”です。「イ」の口で「ウ」と発声してください。
  • ガ行については、体言(名詞)の先頭以外は、英語の「~ing」の発音「η」(か°き°く°け°こ°)が多い様です。この発音については、[η]で表しています。
  • 長く伸ばす音(長音)「ー」は、[:]の記号で表しています。「あー」は[a:]で表します。
  • 人によって違う微妙な撥音(小さい「つ」)や長音(「ー」)は、括弧( )を付けて表しています。
  • ラ行には「r」ではなく「l」を用いています。